ノラネコに命名
最近のお昼時の公園は暖かい。
そして度々、猫が私の食事模様を草陰から覗いているらしい。
コイツは、最近擦り寄る目つきの悪いノラ猫。
近所のお婆さんがエサをやっているらしいが、名前は不明だ。
顔馴染みとなったある日、
ビリビリに破けたティッシュの切れ端の様な物を咥えて現れた。
「なにこれ・・・」
猫を見つめていると、ぽそりと地面に置いて私を見つめている。
「この汚いティッシュと引き換えにエサをくれと言うのか?」
私は明太フランスパンを手に持っていた。
「これが食いたいのか?」
パンを猫に見せると、なんだかうなづいた様に見えたので、ちょっとだけちぎる。
すると、「にゃ〜」と猫なで声で歩み寄り、私の手から食べようとした。
残念ながら、ノラ猫だけに汚い。
また、かじりつかれる怖さから地面に置いた。
猫はくんくんと匂いを嗅ぎ、鼻先でパンを転がすと、食べる事なく私を見つめる。
私の好きなパンを拒んだ猫に思わず「毒なんて入ってねーよっ」と顔を顰めた。
それでも、猫は動じる事なく見つめてくる。
ふと、猫は私の座るベンチに目を向けた。
「これはやらねーよ」
私が最後のお楽しみとして取っておいたパンの袋をじーっと見ている。
全粒粉のパンにドライフルーツが入っている歯応えのあるパン。
フランスパンといい、こういったパンを良く噛み締めると味わいが更に出てくるので、食べた感じする。
ふかふかしすぎるパンはあまり噛まないから、満腹中枢を刺激しないまま食事が終わってしまうから物足りない。
このパンを猫は出してみろと言わんばかりに、目つき悪く見つめてくる。
「まだこっちのパンを食っている途中だからダメ〜。そこの明太フランスを食え」
私が指をさしてもちらりと見るだけ。
「みゃ〜」と鳴いて催促している。
仕方ないと食べかけのパンを袋に戻し、ドライフルーツのパンをちょっとだけちぎって地面に置いた。
猫はサッとパンに顔を寄せるが、
また食べない。
元からこういう顔なのだろうが、
拗ねた様な眼差しで私を見ながら訴える
「みゃ〜」
この猫の表情を見ていると、
「これじゃないんだよ」と言われている様だ。
タダでエサをもらおうとするクセに生意気だぞっ。
私は猫を放って置いてパンを食べ進める。
猫は諦めが悪いのか、私の足元に座る。
目つきが悪い猫だが、ちょっとだけかわいい。
猫と呼ばずに名前を付けようと考えた。
とはいえ、汚い猫。しかもちょっと臭う。
ティッシュを持って来たから
「そうだ、今日からお前はエリエールだ」と猫に語りかけてみた。
エリエールと呼ばれた猫は、こっちをチラ見する。
とにかく目つきが悪いから、気に入らないのかと思う。
野太い私の声で「エリエール」と再度呼びかけるが、無視された。
生意気なっ。
名前からしたら綺麗なイメージだろうっ。
お前にはもったいない名前だ。
「エリエールっ、このパンは美味いよ。本当は猫に餌をやっちゃあいけないけど生きるために食べろ」
しつこくエリエールと呼びかけていると、ふいと立ち去った。
名前が悪かったのかな。
今度は、「ネピア」と呼んでみよう。