増税、還元、キャッシュレス。 そして明日は、ホープレス。

長編小説を載せました。(読みやすく)

熊野十二社

【 死に場所 】place of death 全34節 【第2部】(33) 読み時間 約14分

(33) 渋々、仙蔵は寺の門を潜る。 年始めは寺も檀家廻りがあったりするから、その手伝いじゃないだろうかと足取りは重い。 信一郎に御救小屋に連れて行かれた後、唐突に働いたらどうだと言った事から、もしかしたら出家を促されるのかと、益々、仙蔵は嫌…

【 死に場所 】place of death 全34節 【第2部】(32) 読み時間 約12分

〈東京都水道歴史館〉 (32) 翌朝早く、仙蔵は目が覚めた。御救小屋に行かねばと身を起こしてみたが、もう出かける必要がない・・・。 喉が渇き、台所へ行って水を飲む。 立て付けの悪い戸を開けた。 外はまだ薄暗く、雪がちらりと降っている。改めて寒さ…

【 死に場所 】place of death 全34節 【第2部】(31) 読み時間 約13分

(31) 翌日、仙蔵はこれまで通り御救小屋で病人を介抱する。 取払い間近とあって、各地から名主、身受人らが続々と収容人を引取り小屋を後にする。 大病人や極大病人は動かす事が難しく、大八車に乗せて療養所などに分散して少人数づつ移し始めた。 その…

【 死に場所 】place of death 全34節 【第2部】(30) 読み時間 約13分

( 新版御府内流行名物案内双六 イメージ ) (30) 夕方になると、炊事場から勝吾郎や女集が、豪勢な鴨と鮭が入った粥をお盆に載せて病人部屋に現れた。 「お里さん、仙蔵、夕飯を持って来たぞ~っ。動ける者は、食堂に行ってくれっ」 「なんだか美味そう…

【 死に場所 】place of death 全34節 【第2部】(29) 読み時間 約12分

〈 江戸名所図会 内藤新宿 〉 (29) 三日後、仙蔵は御救小屋の勤めを終え、四谷大木戸近くの臨時番屋に足を運んだ。 戸を開けると、鉤鼻の正平がいた。 「おうっ、仙蔵っ。でかしたっ!」 「えっ?」 正平はとてつもなく喜んで仙蔵の手を取った。 なにが…

【 死に場所 】place of death 全34節 【第2部】(28) 読み時間 約10分

( 江戸名所図会 熊野の瀧 ) (28) 仙蔵は帰り道の途中にある熊野十二社の鳥居を潜って参詣した後、境内をうろつき、社(やしろ)の裏手やごみ捨て場を窺うが欲するものがない。 ないな・・・。 仙蔵は鳥居に一礼をして、ふらふらと溜池周辺を歩き回ってみ…

【 死に場所 】place of death 全34節 【第2部】(27) 読み時間 約10分

( 荒歳流民救恤図 イメージ ) (27) 「あっちーいっ、こっちが焦げちまうよっ。あっ、仙蔵、調度良かった。一緒に水かぶんねえか?」 仙蔵は病人部屋は寒いからいいと、ふんどし一丁の勝吾郎に断った。 「あれっ、芳蔵さんは?」 勝吾郎は柄杓の水を頭…

【 死に場所 】place of death 全34節【第二部】(25)~(26) 読み時間約15分

( 荒歳流民救恤図 イメージ ) (25) 翌日の昼。仙蔵は約束通り、御救小屋の門脇で信一郎を待っていた。 信一郎はすでに小屋に来ており、元締手代の岡田宗泰と話を付けていた。 もうそろそろ来るだろうと、門から表を覗くと仙蔵が緊張した面持ちで立って…

【 死に場所 】place of death 全34節【第二部】 (24) 読み時間 約10分

(24) 翌朝、明け六つに信一郎は伝造を伴い、内藤新宿を出立。 町奉行所への登所は、八つ時(午前八時頃)だった。 役所の町会所掛の用部屋で、信一郎は上役与力、古参の野本冶座衛門に書類を提出。 その時、他の同心達と一緒に、来月十二月八日を以て、…

【 死に場所 】place of death 全34節 第二部(23) 読み時間 約10分

( 江戸名所図会 熊野十二社 角筈村 ) (23) 南へ七八町、神田上水沿いに歩く。角筈村に入り右手に大きな用水路が広がる。 熊野十二社の鳥居が見えると、滝の音が聞えてきた。 「ここの神社へも参拝に来たのか?」 熊野の滝は、凡そ三丈の高さから水飛沫…