御救小屋
( 荒歳流民救恤図 イメージ ) (27) 「あっちーいっ、こっちが焦げちまうよっ。あっ、仙蔵、調度良かった。一緒に水かぶんねえか?」 仙蔵は病人部屋は寒いからいいと、ふんどし一丁の勝吾郎に断った。 「あれっ、芳蔵さんは?」 勝吾郎は柄杓の水を頭…
( 荒歳流民救恤図 イメージ ) (25) 翌日の昼。仙蔵は約束通り、御救小屋の門脇で信一郎を待っていた。 信一郎はすでに小屋に来ており、元締手代の岡田宗泰と話を付けていた。 もうそろそろ来るだろうと、門から表を覗くと仙蔵が緊張した面持ちで立って…
(9) それからしばらくは、どんよりとした天気ながら平穏な日が続き、十一月に入った。 十日もすれば、蕎麦が収穫できる。 早朝から釣りに出かけ、昼過ぎに帰ってきた仙蔵は、釣った鮒を魚籠(びく)から桶に移していたところに、圭助とおきつがやってきた。…
(7) そして、翌日のお八つ時。 仙蔵は猪吉の家にはすぐに入らず、少し離れた木陰から様子を窺っていた。 みんなが集ってから話し合いが始まる。その前から待っているのも針の筵に座らせられるようで堪らない。 仙蔵は村人の集り具合を見ていた。 ちらほら…
(川崎市立民家園) (3) 全国的に大飢饉が続く中、甲斐に隣国の商人が現れた。商人等は相場よりも高値で米を買い集めた為、甲斐から米が流出した。当然、米価は高騰。 甲斐都留郡(大月市周辺)では三年以上続く飢饉で多くの死者が出ており、これが更なる…